みなさん、こんにちは! 毎日オルカンの画面を開いては、上がった下がったと一人で騒いでいる当サイト管理人です。
前回の記事では、「投資信託の値段は、なぜその日のうちに分からないのか」という話をしました。オルカンの今日の基準価額は「昨日のアメリカの結果 × 今日の朝の為替」で決まっている、というあの話です。
今回はその続きとして、ここで出てきた「為替」の部分を掘り下げます。
というのも、私が投資を始めたばかりの頃、こんな状態だったんです。
「基準価額が上がった」「下がった」という結果だけを見ていて、それがなぜ起きているのかが、まったく分かっていませんでした。
ニュースでは「米国株が最高値を更新」と言っているのに、自分のオルカンはマイナス。 逆に、特に何も起きていない日なのに、なぜかプラスになっている。
「……なんで?」
この「なんで?」がずっと解消されなくて、モヤモヤしていました。 そして今、その正体はだいたい「為替」だったと分かっています。
今回は、この為替の部分——特に「TTM(仲値)」という、投資信託の世界ではめちゃくちゃ重要なのに、あまり語られないレートについてお話しします。
まず前提:基準価額は「2つの要素」で決まります
オルカンやS&P500のように、海外の資産に投資する投資信託。 その基準価額を動かしているのは、大きく分けて2つです。
- ① 投資先そのものの値動き(=株価指数)
- ② 為替レート(=円とドルの関係)
大事なのは、この2つが足し算ではなく掛け算で効いてくる、という点です。
アメリカの株がドル建てでいくら値上がりしても、その間に円高が進んでいたら、円に直したときの金額は目減りします。 逆に、アメリカの株が横ばいでも、円安が進めば円換算の金額は増えます。
つまり私たちがオルカンを持っているとき、実は同時に「ドルなどの外貨」も持っているのと似た状態になっているわけですね。 ここに気づいたときは、けっこう衝撃でした。
TTM(仲値)とは、いったい何なのか
さて、ここからが本題です。
前回、こう書きました。海外資産のファンドの基準価額は、運用会社の説明によると「基準価額算出日の午前10時頃の為替レート(対顧客電信売買相場の仲値)」を使って計算されます。
この「対顧客電信売買相場の仲値」というのが、いわゆるTTMです。
「Telegraphic Transfer Middle Rate」の略でした
正直に告白すると、私はこのサイトを作る過程で初めて、TTMが何の略かを知りました。
「仲値」という言葉自体は、なんとなく聞いたことがありました。 でもそれが具体的にどこで、どう使われているのかまでは、まったく知らなかったんです。
東京スター銀行の用語集によると、TTMはこう説明されています。
「Telegraphic Transfer Middle Rate」の略で、銀行が外国為替を取り扱う際の基準となる為替レートのこと
直訳すると「電信送金の、真ん中のレート」。日本語では「電信仲値」とも呼ばれます。
毎営業日の朝10時ごろに決まって、その日は基本的に固定です
ここがいちばん面白いところなのですが、TTMは1日中動き続けるレートではありません。
各銀行が朝9時55分ごろの為替相場を参考にその日のレートを決めて、10時ごろに公表します。そして、よほど大きな変動がない限り、そのレートがその日1日ずっと使われます。
銀行ごとに決めるので数値は微妙に違うのですが、参照している市場が同じなので、実際にはほぼ横並びになります。
これ、けっこう衝撃じゃないですか?
FXのチャートは24時間ずっと動き続けています。 でも投資信託の基準価額に使われる為替は、朝の1回きりなんです。
ということは、昼に為替が動いても今日の基準価額は動きません
この事実には、実用的な意味があります。
たとえばお昼のニュースで「1ドル◯◯円まで円安が進みました!」と報じられたとします。 思わず「お、今日のオルカンはプラスかも」と期待してしまいますよね。
でもその昼の値動きは、今日の基準価額には反映されません。 今日ぶんの為替は、朝10時の時点ですでに確定してしまっているからです。
その円安が効いてくるのは、早くても翌営業日ということになります。
私はこれを知ってから、昼の為替ニュースに一喜一憂するのをやめました(笑) 焦っても、今日の数字はもう変わらないので。
ついでに:海外旅行の両替で損した気分になる、あの正体
少し脱線しますが、TTMを知るとずっと謎だったことが1つ解決します。
海外旅行に行くとき、空港や銀行で円をドルに両替しますよね。 そのとき「あれ、ニュースで見たレートと全然違うんだけど……」と思ったこと、ありませんか。
私は旅行が好きなので、これがずっと引っかかっていました。
あれの正体が、TTMの兄弟にあたるTTSとTTBです。
- TTS(Telegraphic Transfer Selling Rate)= TTM + 手数料。銀行が私たちに外貨を売るときのレート
- TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate)= TTM − 手数料。銀行が私たちから外貨を買い取るときのレート
つまり、真ん中にTTMがあって、その上下に「売るとき」と「買うとき」のレートが置かれている構造です。 旅行前に両替して、帰国後に余った分を戻すと、なんとなく減っているあの現象は、この往復ぶんの差から生まれていたわけですね。
10年以上モヤモヤしていたことが、投資信託の仕組みを調べていたら解決しました(笑)
「株は上がったのに、基準価額はマイナス」が起きる理由
さて、ここまで分かると、冒頭の「なんで?」に答えが出せます。
2つの力が、逆を向いた日
基準価額は「指数 × 為替」の掛け算でした。ということは、この2つが逆方向に動いた日があり得ます。
- アメリカの株は上がった(プラス材料)
- でも円高が進んだ(マイナス材料)
この場合、両者が打ち消し合って、ニュースでは「米国株高」と言っているのに、自分のオルカンはマイナスという状況が生まれます。
逆のパターンもあります。アメリカの株は冴えなかったのに、円安が大きく進んだおかげでプラスになる日。 「今日は特に良いニュースなかったのに、なんで増えてるんだろう?」という日は、だいたいこれです。
為替介入があった日のこと
この「為替の力」を体で理解したのが、為替介入があったときでした。
為替介入というのは、ざっくり言えば通貨当局が為替相場に働きかける行動のことです。これが実施されると、為替が短時間で大きく動くことがあります。
そのとき私が何を見たかというと——株式市場では特別なことは何も起きていないのに、自分の評価額がガクッと動いたという光景でした。
それまでの私は、正直なところ「投資信託=株を買っているもの」としか思っていませんでした。 でもこの日、「あ、自分は同時に為替のリスクも取っているんだ」ということを、頭ではなく感覚で理解しました。
正直、その瞬間はけっこう肝が冷えました。でも今振り返ると、この経験ができて本当に良かったと思っています。
内訳が分かると、受け止め方が変わります
ここからが、私が一番伝えたい部分です。
同じ「マイナス」でも、その中身が分かっているかどうかで、受け止め方はまったく変わります。
指数が上がっているなら、素直に喜んでいい
たとえば「基準価額はマイナスだけど、指数自体はしっかり上がっている」という日。
これは言い換えると、自分が投資している世界中の会社は、ちゃんと価値を伸ばしているということです。 円換算した数字が一時的に目減りしているだけで、投資先そのものは前に進んでいる。
そう理解できると、「今日はマイナスだったけど、まあ悪くないな」と前を向けます。
為替が原因なら、必要以上に落ち込まなくていい
逆に「指数はほとんど動いていないのに、為替のせいでマイナス」という日。
私はこういう日を、あまり深刻に受け止めないようにしています。
というのも、為替は株価とは性質がかなり違うからです。 株式は、企業が利益を積み上げていくことで長期的な成長が期待されるもの。一方の為替は、2つの通貨の相対的な関係で決まるもので、基本的に上下に振れる性格を持っています。
もちろん「円高になった分は必ず戻ってくる」なんてことは、誰にも言えません。 為替がこの先どちらに動くかは、私にはまったく分かりませんし、分かると言う人がいたら疑った方がいいと思っています。
ただ、「今日のマイナスは、自分の投資先が悪くなったから起きたわけではない」と切り分けられるだけで、心の負担はかなり軽くなります。
そして、やっぱり行動は変えません
これは前回も書きましたが、大事なことなのでもう一度書きます。
内訳が分かるようになっても、私の投資行動は何も変わっていません。
「円高だから今月の積立は止めよう」とか「円安だから今のうちに買い増そう」といったことは一切していません。毎月の設定を淡々と続けているだけです。
変わったのは、マイナスの日に無駄に消耗しなくなったということだけ。 でも長期投資において、これはかなり大きな変化だと思っています。
正直に書きます:ドル円だけでは、全部は説明できません
ここで、当サイトの限界についても正直に書いておきます。
オルカンの中身は、ドルだけではありません
オルカンは「全世界株式」です。名前の通り、アメリカだけでなく、ヨーロッパも、日本も、新興国も含まれています。
ということは、その中身はドルだけでなく、ユーロ、ポンド、そのほかさまざまな通貨で構成されているということになります。 実際の構成比は運用会社が公表している月次レポートで確認できますが、いずれにしても「ドル円だけで全部が決まる」わけではありません。
そして当サイトの推計は、基本的にドル円の動きをもとに計算しています。(この計算方法と、公式発表とズレる理由については推計の仕組みの記事にまとめました) つまり、ユーロやポンドが大きく動いた日には、そのぶん実際の値との差が生まれます。
サッカーの試合を、エースの得点だけでは語れない
私はサッカーが好きなのですが、これはサッカーの見方に少し似ていると思っています。
試合結果を語るとき、エースストライカーが何点取ったかは確かに重要な情報です。でも、それだけで試合の全体像は分かりませんよね。 守備が崩壊していたかもしれないし、中盤を完全に支配されていたかもしれない。
ただ、それでも「エースが調子いい日は、チームも勝っていることが多い」くらいの傾向は掴めます。
ドル円を見るというのは、まさにこれです。 全部は説明できないけれど、いちばん大きな影響力を持つ要素なので、方向感は掴める。
だからこそ当サイトは、「ぴったりの数字を当てるツール」ではなく「傾向を掴むツール」という立ち位置にしています。 数円〜十数円の誤差は当たり前に出ますし、それを承知のうえで使っていただくのが正しい使い方です。
まとめ:当てにいくのではなく、握力を強くするために
ここまで読んでくださった方には、もう伝わっているかもしれません。
今日の基準価額をぴったり当てることに、実はあまり意味はありません。
1円単位で正確に予測できたとして、それで私たちの投資行動が変わるでしょうか。変わらないですよね。長期・積立・分散でコツコツ積み上げるなら、今日の数円は誤差の範囲です。
じゃあ何のために見るのか。私の答えはこうです。
日々の傾向を掴んでおくと、相場を握り続ける力——いわば「握力」が強くなるから。
意外かもしれませんが、日々の増減を眺めるのは普通に楽しいんですよ。少しでも増えていたら嬉しいですし。 そして、うまくいっていない時期に上手に距離を取れる(=見ないでおく判断ができる)ようになると、暴落が来ても手放さずにいられます。
そのうえ、こうして仕組みを調べていくと、気づかないうちに金融の知識も増えていきます。 実際、私はこのサイトを作る過程で、TTMのことも、両替レートの仕組みも、ブラインド方式のことも知りました。
今回の内容をまとめます。
- 海外資産の投資信託は「指数 × 為替」の掛け算で動く
- 使われる為替はTTM(仲値)。朝10時ごろに決まって、その日は基本的に固定
- だから昼に為替が動いても、今日の基準価額は動かない
- TTMの上下にあるのがTTS・TTB。海外旅行の両替で目減りする理由はこれ
- 「株高なのにマイナス」は、指数と為替が逆を向いた日に起きる
- 内訳が分かると受け止め方が変わる。ただし行動は変えない
- ドル円だけでは全部は説明できない。だから当てるのではなく、傾向を掴むために使う
投資は、知識よりもメンタルで結果が変わる場面がたくさんあります。 少なくとも私は、仕組みを知ることが、そのメンタルを支える一番の近道だと思っています。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
※注意事項(免責事項)
- 本記事は為替や投資信託の仕組みの解説および運営者個人の経験に基づく情報提供であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。
- 為替レートの決定方法や適用時間は、金融機関やファンドによって異なる場合があります。実際の取り扱いについては、各金融機関および各ファンドの交付目論見書をご確認ください。
- 投資には元本割れのリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
