投資信託やNISAで資産形成を始めると、どうしても気になってしまうのが「毎日の株価の値動き」です。

スマートフォンの証券アプリを開いては、「今日は少し資産が増えた」「昨日の米国市場が下がったから、自分の評価額も減ってしまった」と、日々の変動に心を揺さぶられている方も多いのではないでしょうか。特にオルカン(全世界株式)などで投資デビューしたばかりの頃は、少しの下落で「このまま持ち続けて本当に大丈夫なのだろうか」と不安になるものです。

当サイト「FundScope」では、毎日のマーケットの動きにフォーカスを当てたデータの推計を提供していますが、同時に強くお伝えしたいことがあります。それは、「株式市場が歩んできた長い歴史を知れば、日々の値動きは微々たるものに見えてくる」ということです。

目先のチャートから少し視点を上げ、株式という仕組みがどのように生まれ、発展してきたのか。その歴史を振り返ることで、私たちが取り組んでいる長期投資への視界は劇的にクリアになります。今回は、世界と日本の株式市場の成り立ちを紐解きながら、インデックス投資において最も大切な「心構え」についてお話しします。

大航海時代が生んだ大発明!400年前の「リスク分散」

現在、私たちが資産形成の要としている「株式」は、誰がいつ発明したものなのでしょうか。その歴史は、今から400年以上も前に遡ります。

1555年:イギリス「ロシア会社」に見る、共同出資のはじまり

株式というアイデアの原点は、16世紀のイギリスにあります。1553年の北極海探検を皮切りに、1555年に国王からの特許状を得て設立された「ロシア会社(Muscovy Company)」は、複数の出資者から資金を集める「ジョイント・ストック・カンパニー」の初期の例としてよく挙げられます。

当時の海外貿易は、香辛料などで莫大な利益を得られるチャンスがある反面、海賊の襲撃や難破などにより、船も積荷も資金もすべて失うリスクと隣り合わせでした。そこで、特定の富裕層一人が全リスクを背負うのではなく、「複数の人から少しずつ資金を集め、利益が出たら出資額に応じて分配する」という仕組みが考案されたのです。

ただし、この段階のものは「1回の航海ごとに出資者を募り、終わったら精算する」という形が中心でした。今の株式会社とは、まだだいぶ違います。

1602年:オランダ東インド会社が「世界初の株式会社」と呼ばれる理由

現在につながる本格的なシステムを完成させたのが、1602年に設立された「オランダ東インド会社(VOC)」です。世界最初の株式会社と言われるのは、こちらの方です。

面白いのは、イギリス東インド会社の方が2年早い1600年に設立されているという点です。それでもVOCが「最初」と呼ばれるのは、イギリス側が1航海ごとに出資者を募る方式で、恒常的な株式会社ではなかったからだとされています。

VOCが確立したのは、次のような仕組みでした。

  • 会社そのものに継続的に出資を募る「永続的な資本」
  • 出資額を超える責任を負わない「有限責任」
  • 株式を自由に譲渡できること

一般市民から少額の資金を広く集め、利益を配当として還元する。これは現代の株式会社の仕組みそのものです。私たちがオルカンを通じて世界中の会社に少しずつ出資できているのも、元をたどればこの発明にたどり着きます。

17世紀初頭:アムステルダムで「株式を売買する場」が生まれる

株式が広く発行されるようになると、「将来有望だから自分も買いたい」「現金が必要になったから誰かに売りたい」というニーズが当然生まれます。

VOCの株式は譲渡が自由だったため、アムステルダムでは株式の売買が日常的に行われるようになりました。これが証券取引所の原型とされています。

見知らぬ人同士でも株式を売り買いできる。この「いつでも換金できる」という性質があるからこそ、私たちも安心して投資信託を持てているわけですね。

日本の株式市場の夜明けから現代の東証へ

世界で生まれたこの画期的な仕組みは、どのようにして日本へ定着したのでしょうか。

1873年(明治6年):第一国立銀行の誕生

長かった鎖国が終わり明治時代に入ると、日本は急速に西洋の近代的な経済システムを取り入れ始めました。その中で、日本最初の株式会社とも言われるのが、1873年に設立された「第一国立銀行」です。

名前に「銀行」とついていますが、これは国立銀行条例に基づいて設立された民間の会社です。渋沢栄一記念財団の資料によると、渋沢栄一が総監役・頭取として、近代的な銀行制度の創設を進めました。

この銀行はその後、第一銀行 → 帝国銀行 → 第一勧業銀行と姿を変え、2002年に現在のみずほ銀行になっています。150年前に生まれた会社が、名前を変えながら今も続いているわけですね。

1878年(明治11年):渋沢栄一と「東京株式取引所」

日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一らの尽力により、1878年に「東京株式取引所」が設立されました。これが、現在の東京証券取引所(東証)のルーツです。

日本取引所グループの沿革によると、創立は1878年5月15日、最初の立会が行われたのが6月1日でした。

当時の取引所にコンピューターなど存在せず、手サインや声を出して売買を成立させる、熱気にあふれた場所だったそうです。

1949年(昭和24年):戦争で止まり、また動き出した市場

その後、第二次世界大戦により、日本の株式市場は大きな困難に直面します。全国の株式取引所は日本証券取引所に統合され、戦局の悪化にともない1945年8月には売買立会が停止されました。

市場そのものが止まったわけです。

そして戦後、1949年4月1日に新しい「東京証券取引所」が設立され、売買が再開されたのは同年5月16日でした(日本取引所グループの沿革より)。

高度経済成長期の熱狂、バブル経済の崩壊、リーマンショック、そして近年のパンデミック。数々の危機を乗り越えながら、市場は今日まで動き続けています。

20年のスポーツ人生と比較して気づいた「時のスケール」

ここまで株式市場が歩んできた道のりを振り返りましたが、この歴史を知ることが、なぜインデックス投資の実践に役立つのでしょうか。

私は幼少期から約20年間、ひたすら一つのスポーツに打ち込んできました。人生の大部分を練習に費やし、怪我に悩み、結果が出ずにもがいたその20年間は、私個人の感覚としては途方もなく長く、重みのある時間です。

しかし、株式市場の歴史はどうでしょうか。オランダ東インド会社の設立から数えると、すでに400年以上が経過しています。私が青春のすべてを捧げた20年間の、実に「20倍」もの時間をかけて、株式市場は存在し続けているのです。

その400年の間には、世界大戦、大恐慌、自然災害、疫病など、今日私たちが直面している下落相場とは比べ物にならないほどの絶望的な危機が幾度となく訪れました。それでも世界中の企業は立ち上がり、新たなテクノロジーを生み出し、経済を拡大し続けてきたのです。

この圧倒的なスケールの違いを前にすると、人間の肌感覚がいかに短い期間に縛られているかを痛感します。証券アプリを開き、数%のマイナスを見て「資産が減り続けるのでは」と不安になるのは人間として当然の感情です。しかし、400年という巨大な歴史のチャートで見れば、今日の暴落も明日の暴騰も、本当に微々たる「点」にすぎません。

資本主義の歴史は、短期的な暴落を何度も経験しつつも、長期的な目線ではしたたかに右肩上がりの成長を続けてきたという事実を教えてくれています。

FundScope流・インデックス「ガチホ」が最強の理由

当サイト「FundScope」では、毎日の株価の動きや各種データを配信しています。しかし、その目的は「日々の値動きに焦って売買の判断を下すため」ではありません。株式市場という壮大なリアルタイム・エンターテインメントの「ワクワクやドキドキを純粋に楽しむため」です。

全世界の経済成長を丸ごと享受できるインデックスファンドを長期積立のベースとして設定し、それは何があっても手放さない。日々の値動きは「今日は世界でこんな出来事があって株価が動いたのか」とサイトを通じて観察しつつ、行動としてはひたすら「ガチホ(長期保有)」を貫く。

このスタンスこそが、投資における精神的なストレスをなくし、心に余裕を持たせながら最終的に資産を大きく育て上げるための「最強の戦略」だと確信しています。

投資は「歴史の波」に乗るエンターテインメント

株式市場には400年を超える途方もない歴史があり、先人たちは幾度となく危機を乗り越えてきました。私たちがインデックスファンドを買うということは、この力強い「歴史の波」に相乗りさせてもらうことに他なりません。

日々の値動きに惑わされ、自分の投資ルールを破りそうになった時は、ぜひこの「歴史のスケール」を思い出してください。そうすれば、投資において最も重要な「手放さずに持ち続ける握力」が自然と高まっていくはずです。日々の相場をエンターテインメントとして楽しみながら、どっしりと構えて資産形成を続けていきましょう。

※注意事項(免責事項)

  • 本記事は株式市場の歴史に関する一般的な情報提供および運営者個人の考えの共有であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。
  • 歴史的な出来事の年代・経緯は公開されている資料に基づいて記載していますが、研究者や資料によって解釈や年代の扱いが異なる場合があります。
  • 過去に市場が危機を乗り越えてきたことは、将来も同じように回復することを保証するものではありません。記事中の「長期保有」に関する記述は運営者個人の考え方であり、いかなる投資成果も約束するものではありません。
  • 投資信託には元本割れのリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。